音楽の聖地 メンフィス定番観光ガイド
ソウル、ブルース、ゴスペル、カントリー、ロックンロール、どのルーツミュージックを愛していてもクロスロードのように避けては通れない街、メンフィス。音楽狂にとっての聖地ともいえるこの街には、人生で一度は行ってみたい場所が山ほどある。綿花栽培やミシシッピ川沿いの貿易港として栄えたメンフィスには、南のニューオーリンズ、東のナッシュビル、北のシカゴ等、様々な場所から音楽が流れ込み、独自の発展を遂げた。
メンフィスを語る上で最も基本となる音楽はブルースだろう。「メンフィス」=「ブルース」のイメージは、W.C.ハンディが100年以上前の1912年に発表しヒットさせたその名も『メンフィス・ブルース』の影響が大きい。「ブルースの父」として知られるハンディだが、この曲に現在のブルースのイメージはほとんどない。しかし「ブルース」という言葉を使った最初期の曲であり、ローカルな音楽でしかなかったデルタブルースを、一気に一般大衆に知らしめる役目は十分に果たした。
WC Handy Memphis Home And Museum
住所:352 Beale St, Memphis, TN 38103
http://www.wchandymemphis.org/
そのブルースの父の自宅がそのまま博物館として公開されている。非常に小さな家ではあるが、「メンフィス音楽旅」を始める起点として、そしてブルースの誕生を感じるにはふさわしい場所である。
Beale Street
メンフィスを訪れた音楽好き誰もが行く場所がこのビール・ストリート。W.C.ハンディの博物館もこの通りの奥にある。第二次世界大戦後には、南部のブルース・ミュージシャンが貧困から脱出するために、メンフィスのこの通りを目指したという。現在でもビール・ストリートは常に音楽で溢れ、夜はもちろんのこと、昼間から開いているライヴハウスも多く、入りやすい雰囲気の店が多い。
BB King’s Blues Club
住所:143 Beale St. Memphis, TN 38103
https://www.bbkings.com/memphis
ビール・ストリートにあるライヴハウスの代表格がブルース界のレジェンドBBキングのBB King’s Blues Club。ブルースだけではなく、クラシック・ソウルやロックンロールのライヴもあり、本格的な食事も楽しめる。
Jerry Lee Lewis’s Cafe & Honky Tonk
住所:310 Beale St, Memphis, TN 38103
https://jerryleelewismemphis.com/
メンフィス発のロックンロールの開拓者といえば、まず名前があるのがジェリー・リー・ルイス。そして彼のお店が、ビール・ストリートにあるJerry Lee Lewis’s Cafe & Honky Tonk。派手なBBキングの店よりもローカルなディープサウス感を目指したという。
Memphis Rock’n’Soul Museum
住所:191 Beale St, Memphis, TN 38103
https://www.memphisrocknsoul.org
人を中心にカバーしたのが
Memphis Music Hall Of Fame Museumなら、メンフィスの音楽の歴史を幅広く網羅したのが、このMemphis Rock’n’Soul Museum。スミソニアン系だけあって充実の内容。またメンフィス中心地から離れたエルヴィス・プレスリーの自宅「グレースランド」やサンスタジオへは、ここから出るシャトルバスが便利。
Sun Studio
住所:706 Union Ave, Memphis, TN 38103
https://www.sunstudio.com/
1951年、アイク・ターナー指揮のもと、ジャッキー・ブレンストン&ヒズ・デルタ・キャッツが初のロックンロール曲と言われる『ロケット88』を録音した音楽史に残るスタジオ。その後、ルーファス・トーマスやジェームス・コットンのようなブルース、そしてエルヴィス・プレスリーの大ブレイクによりこのスタジオの名は不動のものとなった。1950年にサン・スタジオを創設したのは、ブラック・ミュージックの素晴らしさ(とそれがビジネスになること)を誰よりもよく理解していた白人プロデューサーのサム・フィリップス。ブルース、ゴスペル、カントリー、ロックンロールとジャンルや人種を選ばず、良質の音楽をレコーディングし続けた。当然のように人種差別が行われ、リンチも珍しいことではなかった時代に白人がブラック・ミュージックを手がけることは、非常に稀なことだった。サン・スタジオが「メルティング・ポット」となり、米国音楽を前進させたことは間違いない。この伝説の一部になろうとU2や忌野清志郎もここを訪れ、レコーディングしている。メンフィス中心地からは少し離れているので、Memphis Rock’n’Soul Museum発のシャトルバスが便利。
Graceland
住所:Elvis Presley Boulevard, Memphis, TN 38116
https://www.graceland.com
言わずと知れた「ロックンロールの神様」エルヴィス・プレスリーの大豪邸。世界中の人がここを目指してやってくるメンフィス一の観光スポットではあるが、健全な場所というよりも成功者の狂気を感じる。自宅以外にもテーマパーク、博物館等もあり、とんでもなく広いので一日中楽しめる。Memphis Music Hall Of Fame Museumから出るシャトルバスに乗れば、サン・スタジオの次の停留所がグレースランド。
Elvis Presley Birthplace
住所:306 Elvis Presley Drive, Tupelo, MS 38801
https://elvispresleybirthplace.com
もはやここはメンフィスではないが、せっかくグレースランドを見たなら、もう少し足を伸ばしてエルヴィスへの見識をさらに深めてみてはいかがだろう。もし時間に余裕があるなら、メンフィスから車で2時間程南東に進んだエルヴィス・プレスリーの小さな生家を訪ねるのもいいかもしれない。世界大恐慌の影響を受け財産を失ったプレスリー家は、白人がほとんど住まないテューペロという街に移り住んだ。しかし、この時期の経験が、結果としてエルヴィスの音楽性を育むことになった。彼はグレースランドに住むようになってからも、誰にも知らせることもなく、生活に困る人達に寄付していたという。グレースランドの狂気とは全く異なり、エルヴィスの人格形成期に触れることができる。
Stax Museum Of American Soul Music
住所:926 East McLemore Avenue, Memphis, TN 38126
https://staxmuseum.com
メンフィスが音楽の都となる上で、忘れてはいけないレーベルがもう一つある。サザンソウルの名作を連発してきたStax Recordsだ。オリジナルのスタジオはすでに壊されてしまったが、レプリカを再建築し、今はミュージアムとしてソウルファンを受け入れている。オーティス・レディングやサム&デイヴについてだけではなく、ゴスペルがいかにソウルミュージックとして大衆に受け入れられるようになったのかを学ぶことができる。
Royal Studio
住所:1320 Willie Mitchell Boulevard, Memphis, TN 38106
http://www.royalstudios.com
ここは観光地ではないものの、メンフィス・ソウル・ファンにとって伝説のレコーディング・スタジオが今でもそのまま現存している。スタックスとしのぎを削ったHi Recordsのウィリー・ミッチェルが数多くの名作を生み出したロイヤル・スタジオだ。1915年に劇場(The Royal Theater)として建設、1957年にレコーディング・スタジオに改築された。アル・グリーンをはじめとするソウル・レジェンドと同じ場所に佇み、同じ空気を吸うだけでも感動すること間違いない。
The Arcade Restaurant
住所:540 S Main St, Memphis, TN 38103
http://arcaderestaurant.com
1919年から営業を続けるメンフィス最古のカフェ・レストラン。エルヴィス・プレスリーが通い、永瀬正敏主演、ジム・ジャームッシュの映画『ミステリー・トレイン』のロケ地になったオールディーズ感いっぱいの場所。
National Civil Rights Museum
住所:450 Mulberry Street, Memphis, TN 38103
https://www.civilrightsmuseum.org
直接音楽とは関係ないものの、ミュージシャンにも多大なる影響を与えたマーチン・ルーサー・キング・ジュニア(キング牧師)が1968年に暗殺された場所、The Lorraine Motelが、そのまま公民権の歴史を伝える博物館として営業されている。