ソウル・クラシックスの大辞典を構築中! スマホ対応なので出先でもどうぞ。
「ドック・オブ・ザ・ベイ」の詩は、当時のソウルにしては珍しく周りの街の風景に、心情を重ね合わせて描かれており、俳句のように言葉を聴いただけで、何とも切ないその情景が心に浮かぶ。
この曲で印象的なのは、全体を通じて流れる波の音だ。これはSteve Cropper(スティーブ・クロッパー)とオーティス・レディングが、最後の仕上げをどうしようかと悩んでいたとき、オーティスがふざけてカモメの鳴き声を真似たことにヒントを得て、スティーブ・クロッパーが波とカモメの効果音を入れることを思いついたという。
こうしてオーティス・レディングの新境地ともいえる「ドック・オブ・ザ・ベイ」は、アーティストの死後リリースされた曲として、ビルボード史上初めて1位を獲得した。
A1以外の曲も全曲素晴らしい。むしろ、こっちの方が本来のオーティス・レディングの持ち味が出ている。
アルバムとしては、寄せ集めなので、真のオリジナル作品とはいえないが、彼のアーティストとしてのスケールの大きさを知るには十分な内容。60年代サザンソウルでこれ以上に思い入れがある作品は思い浮かばない。
Sam Cooke(サム・クック)がブラック・ミュージックを取り囲んだ人種の壁をたたき壊した破壊神だとしたら、オーティス・レディングはその遺志を受け継いでソウル王国を築いた創造神といえるのではないか。少し大袈裟ではあるが、それほど凄い人なので、聞いたことがない人は是非お試しを。
Producer: Steve Cropper
1968年