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この作品では黒人教会のゴスペルのように、ライブが進行する。サム・クックはとにかくしゃべりまくる。曲間、曲中問わずマシンガンのようにしゃべりながら、トークと音楽とのあいだに切れ目がない。まるで牧師の説教がそのまま最高のエンターテイメントになっているかのようだ。
観客の楽しみぐあいもハンパない。最近のライブだと、観客がステージに集中していないと周りから怒られることも多いが、このハーレム・スクエア・クラブでは、音楽を自由に楽しんでいる感じがする。また、サム・クックも、そんな雰囲気を感じながら、終始一貫楽しそうに歌っている。
アメリカで公民権法が成立したのが1964年のこと。このハーレム・スクエア・クラブのライブが行われた1963年では、白人社会に受け入れられた黒人が、自らのルーツを表現することが難しかった。また、一度白人に迎合したとみなされれば、黒人社会に戻ることも難しくなる。それでも恐れることなく、アフリカ系米国人としての自分を、素直に黒人の聴衆の前で表現したサム・クック。今の時代では想像できないくらいのプレッシャーを感じていたに違いない。そして、このライブでは、そんな彼の決意を観客があたたかく受け入れている。
『ライブ・アット・ハーレム・スクエア・クラブ・1963』は間違いなくソウル史を代表する一枚。サム・クックが人種の壁をぶちこわし、ソウルの歴史を切り開いたのだ。