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ソウル&ファンク大辞典

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モハメド・アリ、サム・クック、マルコムXが目指したものとは?


2016年6月3日、モハメド・アリが亡くなった。1960年ローマ五輪での金メダル、史上最年少での世界ヘビー級タイトル獲得、奔放な反体制的発言、徴兵拒否とタイトル剥奪、社会的抹殺、世界チャンピオンへの復帰、日本人なら対アントニオ猪木戦、パーキンソン病との闘い等、挙げればきりがないほど、波乱万丈の人生だった。

外交的なモハメド・アリは他種目や異分野の人たちとも交流があり、特にサム・クックとの交流はよく知られている。サム・クックはまだアリが本名のカシアス・クレイを名乗っていた時に、レコーディングを手伝っており、サム・クックがカシアス・クレイのリングで紹介されたこともあった。

当時のアメリカは公民権運動が盛り上がりを見せていた時代であり、その反動も起きていた。1963年8月28日には20万人以上が参加したワシントン大行進があり、“I Have a Dream”で有名なキング牧師の演説もあった。同年11月22日には公民権法成立に尽力したジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された。

サム・クックとカシアス・クレイもただ単に気が合ったから交流したわけではない。人種差別撤廃という共通の目的があったのだ。そして二人をつなぐ役割を果たしていたのが、アフリカ系米国人によるイスラム運動組織「ネーション・オブ・イスラム」の顔であったマルコムXだった。

1964年2月25日、カシアス・クレイはソニー・リストンを破り、史上最年少で世界ヘビー級の王座を獲得した。試合後、全米が狂喜したにもかかわらず、クレイはサム・クックとジム・ブラウン(アメリカンフットボールのスター選手)を連れて、マルコムXが宿泊するホテルの部屋へ向かったといわれている。そしてアイスクリームを食べながら勝利を祝い、静かに一夜を過ごした(盗聴を気にして静かにしていたという噂もある)。

翌朝、カシアス・クレイはネーション・オブ・イスラム(NOI)への加入を発表。しばらくして、奴隷の名前だという理由で本名を捨て、NOI代表のイライジャ・ムハンマドから授けられた名前「モハメド・アリ」を名乗った。

アリがリストンに勝った夜、ホテルに集まった4人は、その後、不可解な出来事に見舞われている。そのうち2人は、1年も経たないうちに殺害された。

サム・クックは1964年12月11日に射殺された。マルコムXはその約2ヶ月後に自宅を爆破され、その時は一命を取りとめたが、1965年2月21日に暗殺された。

実はマルコムX暗殺と同じ日、モハメド・アリのアパートでは不審火があった。アリは自分も誰かに狙われていると感じ、しばらくの間、身を隠していたといわれている。(ちなみにプロとして全盛期を迎えていたジム・ブラウンも、なぜか1965年のシーズンを最後に突然スポーツ界から引退している。)

サム・クック、マルコムX、モハメド・アリの3つの事件の真相は闇に葬られた。アリは生き残ったが、1967年4月28日、徴兵拒否を表明したことから、有罪確定の前にチャンピオンベルトを剥奪され、社会的に抹殺されている。

サム・クックの名曲“A Change Is Gonna Come”は、生前にはリリースできなかった。爽やかなイメージのサムに、社会的で重いテーマの曲は似つかわしくないとレコード会社が判断したからだ。この歌では、あの4人の理想が叶いつつあることを祝っているようにも聞こえる。

There been times that I thought I couldn't last for long
But now I think I'm able to carry on
It's been a long, a long time coming
But I know a change gonna come, oh yes it will

何度もくじけそうになった。
でも今は前に進めそうな気がする。
本当に長い時間がかかった。
でも世界は変わろうとしている。そうさ、あともう少しだ。

今では人種差別撤廃を叫んでも、有名人が抹殺されることはなくなった。しかし、ストリートではかつてと同じことが今でも起きている。サム・クックが歌った「あともう少し」が約半世紀経った今でも達成できていないのが現実なのだ。

2016年6月14日





A Change Is Gonna Come - Sam Cooke
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