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ソウル&ファンク大辞典

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Don Covay & The Goodtimers / Mercy!

「ローリング・ストーンズの原型」かもしれない才能

ドン・コヴェイ Mercy!,
Don Covay &
The Goodtimers, 1964
きっとソウルファンにとってのドン・コヴェイ最高傑作のアルバムといえば、Stax Records(スタックス)時代の“See Saw”で決まりだろうが、もう少し視野を広げてみると多様な要素を一枚に集めた前作“Mercy!”も捨てがたい。ここにはソウルの萌芽だけではなく、ブルースに影響を受けたロックの芽生えも感じる。

“Mercy!”に収録された曲は、まるでローリング・ストーンズのような曲がいくつもある。というと普通ローリング・ストーンズのコピーをしていると思われそうだが、話はその逆なのだ。ソウルシンガーにしては少しゆるい歌い方は、ミック・ジャガーによく似ており、ソウルらしくないギターのフレーズはキース・リチャーズのようでもある。ちなみに1曲めの“Mercy, Mercy”のギターはジミ・ヘンドリックスだと言われており、ローリング・ストーンズはこの曲をカバーもしている。つまり、ほぼ確信犯的にドン・コヴェイのスタイルも模倣しているように推測される。

ドン・コヴェイは、1950年代にはリトル・リチャードのプロデュースでデビューしており、“Mercy!”以前からシンガー兼ソングライターとして活躍してきた。チャビー・チェッカーの大ヒット曲『ポニー・タイム』やアレサ・フランクリンの『チェイン・オブ・フールズ』もコヴェイの曲。ソロモン・バークやエタ・ジェイムス、オーティス・レディング、グラディス・ナイト&ザ・ピップス、ウィルソン・ピケット、スモール・フェイセズ等、錚々たるアーティストが彼の曲を取り上げている。ドン・コヴェイ自身はソウル・シンガーとして、彼の曲を取り上げた面々ほどのビッグ・ネームではないが、ユニークなスタイルやライターとしての能力は全く劣っていない。ローリング・ストーンズがドン・コヴェイの才能に惚れても何の不思議もないのだ。

1964年



Mercy, Mercy - Don Covay And The Goodtimers
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