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“What’s Going On”は、すでに従来のソウルの枠を越えて、組曲のようなコンセプト・アルバムになっていた。この名盤の勢いをモロに受けているのが『トラブル・マン』なのだ。両作品をひとつの流れでとらえると、これはとてつもないほど豪華な70年代ブラックカルチャーのサウンドトラックとして考えることもできる。
同時代にブラックスプロイテーション・ムービーのサントラを手がけたアイザック・ヘイズやカーティス・メイフィールドは、職人気質が強く、クライアントの要望を具現化する能力に長けていたが、『トラブル・マン』はあまり映画との関連性を感じない。つまり、映画自体よりも音楽の方が数段格調が高いのだ。ブラックスプロイテーションは下衆なノリが長所でもあるが、『トラブル・マン』は本格的なソウル交響曲であり、『野獣戦争』という作品のサントラとしては不釣り合いだと言わざるを得ない。しかし、マーヴィン・ゲイのクリエイティビティが爆発した70年代という「時代」のサントラとして考えれば、これほど素晴らしい作品は滅多にない。
Producer: Marvin Gaye
1972年