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その傷心のマーヴィン・ゲイが、これまでのポップスターとしてではなく、アーティストとして復活し、1971年に発表したのがこのアルバムのタイトル曲“What’s Going On”。所属していたモータウンは、内容があまりにも社会的すぎるので、リリースを拒んだが、マーヴィンは一歩も引かず、レコード会社を説得し続けた。ストライキまで敢行したマーヴィンに、会社は渋々了承し、結局リリースに至るが、レコード会社の予想は外れ、この曲は大ヒットとなった。
その結果、レコード会社はマーヴィン・ゲイが目指す音楽を自由に作ることを認め、急遽アルバムが制作された。こうして完成した本作は、全編穏やかでメローなサウンドではあるが、歌詞の内容はやはり暗い。幼少期の虐待やテレルの死を経て、彼の内省的な部分が前面に出ており、また、ベトナム戦争や公害などの社会的テーマも扱い、一種のコンセプトアルバムのような作りになっている。
このアルバムをきっかけに、70年代のマーヴィン・ゲイは真のアーティストしての道を歩みだす。また、同じレーベルに所属していたスティービー・ワンダーも、同様の道を歩みだし、この二大スーパースターの才能を原動力にして「ニューソウル」への動きは一気に加速していった。
スライ&ザ・ファミリー・ストーンは、人種の壁を越えることで、新たな次元へと進んだが、マーヴィン・ゲイは逆に、黒人であることをより深く見つめ直すことで、ブラック・ミュージックを新たな次元へと導いた。
父親から音楽や神の教えを受けたマーヴィンだが、1984年4月1日(マーヴィンの誕生日の前日)、その父親の手によって射殺され、44年の人生を終えている。
Producer: Marvin Gaye
1971年