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この頃のマーヴィン・ゲイはすでに大スターであり、若いタミー・テレルを見守る余裕もあった。こうして強くてハンサムな男に、若くキュートな女という、ソウル史上最高の疑似カップルは誕生した。
今でも多くのアーティストに愛されるアシュフォード&シンプソン作の“Ain’t No Mountain High Enough”を始め、このアルバムからは4曲も大ヒットが生まれている。驚くことに最大のヒットは“Ain’t No…”ではなく、“Your Precious Love”だった。Diana Ross(ダイアナ・ロス)が1970年に発表した壮大なオーケストラが入ったバージョンで初めて“Ain’t No…”はチャート1位になった。
“Ain’t No Mountain High Enough”以上にこのアルバムを特別なものにしているのは、やはりタミー・テレルの悲しい運命だろう。この作品で人気を得たふたりだったが、1967年の公演中にタミーは意識を失い、ステージ上でマーヴィンの腕の中へ倒れてしまった。診断の結果、脳腫瘍だと分かり、数回にわたり手術を受けたものの、1970年に24歳の若さで亡くなっている。このストーリーを思い出しながらB4の“Sad Wedding”を聞いていると、涙があふれそうになる。
タミーの死は、マーヴィンに大きくのしかかり、しばらくは芸能活動に復帰できなかったらしい。しかし、その苦悩とともに生きることを決意して誕生したのが傑作“What’s Goin On”であり、その結果、マーヴィン・ゲイは単なるポップスターから、アーティストへと成長することができた。
Producer: Harvey Fuqua, Johnny Bristol, Hal Davis, Berry Gordy, Jr.
1967年