Twitter Facebook

ソウル&ファンク大辞典

ソウル・クラシックスの大辞典を構築中! スマホ対応なので出先でもどうぞ。

A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | UVW | XYZ
ABC | DEF | GHI | JKL | MNO | PQR | STU | VWXYZ
A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | UVWXYZ

The Slits / RETURN OF THE GIANT SLITS

どのカテゴリーにも属さない規格外のユニット

ザ・スリッツ Return of the,
Giant Slits,
The Slits, 1981
1979年発表のデビュー作“Cut”は間違いなくパンク史を代表する傑作だ。女性たちによる自由な表現が、あらゆる社会の常識を打ち破り、特に古い伝統に固執していた当時の英国と音楽界を変革したといっても過言ではないほどインパクトのある作品だった。それに対してこの“Return of the Giant Slits(邦題:大地の音)”は、音楽史において語られることはなく、ほとんど無視され続けてきた。しかしながら、本作はデビュー作の初期衝動を保ちつつ、そこから格段にステップアップし、音楽的幅広さも実現している。特にファンクの引用はロック界でも彼女たちほど早く取り入れたバンドは数少ない。デビュー作でもベースとなるサウンドはパンクとレゲエのミックスであり、マーヴィン・ゲイの“I Heard It Through the Grapevine”のカバーも収録していた。セカンドではこの路線をさらに発展させ、オーネット・コールマンに影響を受けたジャズも取り入れ、ただのパンクバンドの枠を完全に超えた。深い交流のあったザ・クラッシュがそうであったように、ザ・スリッツのメンバーもロックと並行して生活の中でレゲエやブラック・ミュージックに当たり前のように触れており、当時のメインストリームの白人の一般常識からは大きくかけ離れていた。

本作リリースの頃には、ドン・チェリーの養女であり、まだ10代半ばだったネナ・チェリーをステージに上げてパフォーマンスさせ、抜けたドラマーの補充として、ザ・ポップ・グループのブルース・スミスが加入している。このふたりはその後Rip Rig + Panic(リップ・リグ・アンド・パニック)を結成している。このことからもジャズやブラック・ミュージックへの傾倒は必然であったのだ。ちなみに、ザ・ポップ・グループのデビュー・アルバム“Y”は、ザ・スリッツへのオマージュであるともいわれている。というのも英語で“slit”とは女性陰部を意味するスラングであり、その割れ目である一本線にもう一本の棒を突き立てたのが“Y”の由来であるといわれている。

普段の素行から音楽活動まで全てが破天荒なザ・スリッツだが、ベースとドラムのリズム隊だけは、プロデューサーでもあるデニス・ボーヴェルに徹底的に叩き込まれたという。そしてこのグルーヴに精神的支柱であるヴォーカルのアリ・アップの感性が溶け合い、レゲエ・バンドにもパンク・バンドにも、そしてジャズやファンクのバンドにも出せない独自の音楽が完成した。

ジャケット・デザインは80年代数々のアーティストや雑誌を手がけ一世風靡したネヴィル・ブロディ。

Producer: Dennis Bovell, Dick O’Dell, The Slits
1981年



Earthbeat - The Slits
関連アーティスト