The Pop Group / FOR HOW MUCH LONGER DO WE TOLERATE MASS MURDER?
怒りをファンクの燃料にして、パンクを焼き尽くした作品
For How Much Longer
Do We Tolerate
Mass Murder?,
The Pop Group, 1980
まずはこのアルバム・タイトル。意訳すると『俺たちはどれだけ大量殺戮を許すつもりなのか?』。時代はパンク直後の1980年。イギリスは不況から抜け出せずに苦しんでいた。ポップ・グループは前年に、パンクの息の根を絶つ役目を果たした英国ファンクの金字塔『Y(邦題:最後の警告)』をリリースしていた。ところがまさしくタイトルが暗示するように、パンクの時代に逆戻りするかのように堪忍袋の緒が切れてしまったのが、この“For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?”なのだ。本作には怒りが満ちている。これほどの怒りをファンクに込められると、音楽としてのパンクは一気に陳腐化してしまう。Mark Stewart(マーク・スチュワート)のヴォーカルはアジテーションのようでもある。
フェラ・クティは怒りをファンクの原動力にして素晴らしい作品を完成させた。ポップ・グループのこの作品も、少なくとも白人が制作した中では、最も怒りに満ちたファンクアルバムであろう。
狂ったように怒っているのだが、サウンドはとても冷静でもある。英国人らしく様々な要素をうまく取り入れて、独自のサウンドを完成させているのだ。ジェームス・ブラウン直系のファンク、明らかにオーネット・コールマンに影響を受けたフリージャズ、英国人にとっては民族音楽ようなレゲエやダブ、そして表層的なスパイスとして使われたパンクやロック。これほど直情的なサウンドを英国特有のセンスでこなした作品も珍しい。
ポップグループは再結成しているが、本作は怒りが原動力だけに、本人たちでさえ再現することが不可能なタイムカプセルのような作品。
Producer: The Pop Group
1980年