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ファンキーでラップにもチャレンジしたA1 “The Magnificent Seven”で始まり、続く“Hitsville U.K.”ではゴスペル風イントロからポップなモータウンサウンドへと展開、さらにA3 “Junco Partner”ではレゲエ、B2 “Look Here”ではジャズピアニスト兼歌手モーズ・アリソンのカバー、B6 “One More Dub”ではB5 “One More Time”のダブヴァージョン、B1 “Rebel Waltz”でもワルツのダブのミックスという前人未到の荒技を見せ、ダブ的にアルバム全体のマッシュアップを多用し、サイバーパンクの小説『ニューロマンサー』のサントラのような混沌としたE面F面等、いわゆる正調クラッシュのパンク的曲の方が少ないぐらい。この点が元来のクラッシュ・ファンに支持されなかったのだろう。
あまりにも節操がないように思うかもしれないが、英国に住む音楽狂ならこれぐらい多様なジャンルに手を出すことはある意味当たり前。しかも、クラッシュのメンバーは、それぞれ音楽の趣味が異なり、古いロックンロールからスカ、ロックステディ、ニューオーリンズファンクまでめちゃめちゃ詳しい(クラッシュはリー・ドーシーと一緒にツアーをしたことさえある)。パンクやロックしか知らないアーティストとは次元が違うのだ。だからこそ、クラッシュは、技術的な未熟さにも関わらず、パンク・ファン以外からも支持されるようになった。
リリース時にはアナログ盤3枚組で発売され、しかもめちゃくちゃとも受け取れるぐらいの音楽的多様性。これは英国の音楽狂にとっての脳内マップのような大作であり、過激さや芸術性を求めるのではなく、1980年ロンドンのサウンドトラックとしてそのまま受け取るのが正解。
Producer: The Clash
1980年