Eddie Henderson / REALIZATION
医学を学んだ男の瞳孔開き系哲学的ジャズファンク
Realization,
Eddie Henderson,
1973
ジャズが民俗の歴史の身体的表現からサイケデリック文化を取り込み精神的世界の深海に突入した70年代、この時期を象徴し最も危険なレコードのひとつがEddie Henderson(エディ・ヘンダーソン)の本作『リアライゼイション』。遠い祖国の音を意識させる反復するベースラインの上に、神経バキバキで科学者のように研ぎ澄まされた頭脳と優れた身体感覚をフルに活用して各人のインプロヴァイゼーションが展開。自らの血流を逆からたどり、北米からアフリカへと向かい、さらに突破した先に宇宙が広がっていたようなイメージ。東洋人としては、異なる世界観にただただ圧倒されるばかり。作品によって出来不出来が激しいエディ・ヘンダーソンだけに、この作品の場合はプロデューサーに名を連ねるPat Gleeson(パット・グリーソン)の貢献度も大きいのかもしれない。パットのシンセがとにかく狂ってて素晴らしい。
本作がエディ・ヘンダーソンにとってソロ第1作目。それ以前はキレッキレ状態のハービー・ハンコックのレコーディングに参加していた。『リアライゼイション』にもハービーが参加している。ちょうどバービーが名作『ヘッド・ハンターズ』をリリースしたのも同じ1973年だ。この時期の両者が目指す方向が同じなのは、作品を聞けば分かる。70年代のハービーやマイルス・デイビスが好きな人は、きっとこのアルバムも気に入るはず。そして間接的にではあるが、Sun Ra(サン・ラ)の思想的偉大さもほのかに感じる。ちなみにプロデュースのパット・グリーソンもハービー畑の人。
Producer: Skip Drinkwater & Pat Gleeson
1973年