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全編貫かれているのはジャズというよりも、現代音楽のテイストをまぶした都会の路地裏に潜んだどす黒いプリミティブ・ファンク。マイルスは、時代遅れになりつつあるジャズに危機感を持ち、感度の高いロックやファンクを聞いているような若いオーディエンスを対象にしたらしいが、当時の音楽環境では全く理解できないような次元の境地に達してしまった。ほとんど呻くようでメロディーらしいものもなく(マイルス・デイビス自身もあまりトランペットを吹いていない)、ひたすら細かく刻むドラム(ジャック・デジョネット、ビリー・コブハム)とシンプルなベース(マイケル・ヘンダーソン)が紡ぎ出すグルーヴの上に、大都会でフィールドワークしたようなノイズに近いようなサウンドと、自由なギター(ジョン・マクラフリン、デヴィッド・クリーマー)とトランペットが絡む。
“In a Silent Way”からは太古や宇宙のようなものを感じるが、“On the Corner”から感じるのは、大都会の息吹だ。同じアーティストがこれほどの振り幅を高いクオリティで維持できるのは、やはりマイルス・デイビスが天才であること以外に説明がつかない。
Producer: Teo Macero
1972年