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この“Give Your Baby a Standing Ovation”では、3人のプロデューサーが、デルズの魅力を引き出している。1曲目のタイトル曲では、デトロイトソウルの重鎮Don Davis(ドン・デイヴィス)が、絶妙な仕事をしている。最高の素材であるデルズの実力を、ありのままに使い、ソウルの王道ともいえるバラードの傑作を仕上げた。この曲はデルズの中でも屈指の名曲だ。
このアルバムで最も多くの曲を担当したプロデューサーがCharles Stepney(チャールズ・ステップニー)。彼はジャズからソウル、そしてRotary Connection(ロータリー・コネクション)のような実験的なものまで手がけた人で、彼の幅の広さがそのままこのアルバムでも活かされている。例えば、A3“You Don’t Care”は、同じバラードでもドン・デイヴィスとは違いフィリー・テイスト仕上げ、続く“Share”や“Love Can Make It Easier”はカントリーやフォーク、ジャズの影響も感じる。これは同じ時期にステップニーがTerry Callier(テリー・キャリアー)を手がけていたからだろうか。
3人目のプロデューサーはBob Miller(ボブ・ミラー)。彼もステップニーと同じくデルズとは長い付き合いで、このアルバムの中では最もデルズのイメージに近いサウンドを作っている。曲はスタンダードの名曲“The Glory of Love”だが、Benny Goodman(ベニー・グッドマン)のオリジナルとは全く違う解釈でデルズ・サウンドに仕上げている。
こんな多様なサウンドなのに一枚通して聞くと、完全にデルズ風味にまとめられているのは、実力者だけにできる力技であり、さすがとしか言いようがない。
Producer: Don Davis, Charles Stepney, Bob Miller
1973年