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このライヴ・アルバムで聴くべきは、1968年という時代の空気感だろう。アフリカ系米国人の心情を歌うソウル・ミュージックが熟成し、社会状況を反映したファンクが勢いを増す時代となり、カテゴリーの枠を超えてさまざまな音楽的要素がミックスされ、大衆音楽が新たな段階へと突入したのがちょうど1968年頃である。その象徴がマイルスであり、ジミヘンであり、ジェームス・ブラウンであり、スライ&ザ・ファミリー・ストーンなのだ。
スライ&ザ・ファミリー・ストーンにとっても非常に重要な時期であった。この作品に演奏や録音の技術的な問題がいくつかあっても、『エヴリディ・ピープル』が彼らにとって初のナンバーワン・ヒットとなる直前の時代であり(セールスのためには絶対必要なこの曲がライヴ・アルバムに未収録だったことが30年以上発売が遅れた大きな原因だとされている)、スライ・ストーンがまだレコード会社やブラックパンサーからの強烈なプレッシャーを感じる前のライヴであり、彼がライヴに全力投入できた最晩期の記録だからだ。このあと彼ら(というかスライ)は、内面の世界に閉じこもるようになり、新たな境地を開拓することにはなるが、スライ&ザ・ファミリー・ストーンが最高のライヴ・バンドだったことをこのアルバムは証明する。
スライ&ザ・ファミリー・ストーンのライヴは演奏時間が長くなかったこともあり、2日間の4つのライヴの演奏がひとつのパッケージとしてまとめられている。そのためどこから聞いても堪能できるが、爆音で聴くことだけはオススメする。
Producer: Sly Stone, Bob Irwin
1968年