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この作品でPJ・モートンは全く背伸びをしていない。ニューオーリンズ出身であることや、マルーン5のファンを特別意識することもない。好きな音楽を好きな場所でとてもリラックスした雰囲気でプレイしているのだ。サウンドの底辺には、おそらく強い影響を受けているであろうスティービー・ワンダーやマーヴィン・ゲイを感じる懐かしいソウルのテイストが流れている。しかし、詩のテーマとしては、地元LAのことを常に気にかけていたラッパーのニプシー・ハッスルの死を扱った“Buy Back the Block”や、トランプ大統領のおきまりのフレーズをネタにした“MAGA”のように、過去への郷愁だけではなく、時事的な話題も選んだ。だが怒りが前面に出ることはない。彼は生前のニプシー・ハッスルのように、希望を見出しにくい社会情勢でも、どうすれば地元の人たちと前向きに暮らせるのかを考えているという。問題を怒りで解消せずに、前進するための課題だと捉えているのだ。
マルーン5での成功が逆に混乱をもたらし、一時はソロ活動を停止するとも噂されたPJ・モートン。しかし地元に戻ったことで精神的な安定を再び得ることができ、純粋なソウル・ラバーとして、さらにアーティストとして前進することができた。
プロデューサーとしても優秀なPJ・モートンだが、“PAUL”では最先端を目指していない。2019年のニューオーリンズに住む1アーティストが純粋なソウルへの愛を込めた自然な姿がこの10曲には詰まっている。
Producer: PJ Morton
2019年