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例えば1980年の“8th Wonder”は、Johny Taylor(ジョニー・テイラー)の“Ever Ready”と、7th Wonder(セブンス・ワンダー)の“Daisy Lady”をベースにしたヒップホップの古典であり、その後、Public Enemy(パブリック・エネミー)の“Public Enemy No. 1”やBeastie Boys(ビースティー・ボーイズ)の“Shake Your Rump”にシュガーヒル・ギャングのバージョンがサンプリングされている。またAfrika Bambaataa(アフリカ・バンバータ)が「ヒップホップ界の国歌」と呼んだIncredible Bongo Band(インクレディブル・ボンゴ・バンド)の“Apache”の最高のカバーバージョンをシュガーヒル・ギャングも残している(インクレディブル・ボンゴ・バンドのアパッチ自体がカバーであり、本当のオリジナルは英国のギターバンド、シャドウズであるが…)。“8th Wonder”と“Apache”は1982年のアルバム“8th Wonder”に収録されている。
1984年のアルバム“Livin’ In the Fast Lane”にもいい曲がある。1曲目の“Girl”はMoments(モーメンツ)のオリジナルを凌ぐぐらいハッピーなチューンだ。次のタイトル曲にはOlympic Runners(オリンピック・ランナーズ)の“Put the Music Where Your Mouth Is(1974年)”のベースラインが使われた。彼らの音楽は、後年のヒップホップのようにメッセージ性はほとんどなく、ひたすら楽しいパーティーミュージック。サウンドもペラペラ感満載だが、だからこそ、今聞いてもその楽しさが伝わってくる。
この3人組の真の主役はプロデューサー兼Sugar Hill Records(シュガーヒル)の創設者でもあるSylvia Robinson(シルヴィア・ロビンソン)。彼女が“Rapper’s Delight”を形にすれば金になると思い、桃太郎がイヌ・サル・キジを従えたように、シュガーヒル・ギャングのメンバーをひとりずつ集め、録音にまでこぎつけた。シックの“Good Times”をベースにMCがしゃべるというスタイルは、1970年代後半のニューヨークでは数人のDJが実践していたといわれ、言ってみれば彼女がこのアイデアをパクって、ヒップホップ初のメジャーヒットを生み出した。シルヴィア・ロビンソンはGrandmaster Flash & the Furious Fiveの“The Message”もプロデュースしており、ヒップホップ黎明期に多大なる貢献をしている。