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Afrika Bambaataa(アフリカ・バンバータ)は、ヒップホップの構成要素として、「ラップ」「DJ」「ブレイクダンス」「グラフィティ」「知識」の5つをあげている。マルコム・マクラーレンの“Duck Rock”には、この5つがモロに取り込まれているのだ。
このアルバムを構成する上で重要な役割を演じているのが、曲間をつなぐWorld’s Famous Supreme Team(ワールズ・フェイマス・スプリーム・チーム)の疑似ラジオショーだ。彼らは1970年代後期、ヒップホップが大きなムーブメントに広がろうとしている時に、本当にラジオ番組のDJをしていた。
またグラフィティには、カリスマ・アーティスト、Dondi(ドンディ)とKeith Haring(キース・ヘリング)がアルバムワークに参加している。
真のミュージシャンとはいえないマルコムをサウンドで支えたのがプロデューサーのTrevor Horn(トレヴァー・ホーン)だ。この作品ではArt of Noise(アート・オブ・ノイズ)のメンバーと一緒にサウンド作りを一手に任されている。
マルコム・マクラーレンはアーティストではない。彼の興味はビジネスにあり、音楽やカルチャーは手段でしかない。ヴィヴィアン・ウエストウッドをファッションデザイナーとして大成させ、セックス・ピストルズの仕掛人となり、パンクをビジネスに変えた。“Buffalo Gals”のPVを見れば、今度はヒップホップで一山当てようとしているのは明らかだ。彼はピエロのように振る舞うだけで、本当の主人公はバックでブレイクダンスやグラフィティ、スクラッチを披露する黒人アーティスト達である。マルコム・マクラーレンは、こうした情報を知識として、英国の白人音楽市場に売り込んだのだ。
それでも、それがいくら金儲けのためであろうと、『ダック・ロック』は、おそらく白人がヒップホップのマナーを、メディアを通して、完全に踏襲した初めての作品であり、音楽史においても非常に重要な一枚である。
Producer: Trevor Horn
1983年