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アメリカ中南部のオクラホマ州で育ったカレン・ダルトン。21歳までに2度の結婚と離婚を経験、60年代初頭にニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジに移り、ボブ・ディラン等のフォーク・シーンの新星たちと交流を持つ。
“It’s So Hard to Tell Who’s Going to Love You the Best”で聞くことができる音は最小限のシンプルな構成で、カレン・ダルトンはつぶやくように歌いかける。彼女の歌声は、ビリー・ホリデーに例えられるが、本人は1920年代に活躍したブルース・シンガーBessie Smith(ベッシー・スミス)に影響を受けたという。
グリニッチ・ヴィレッジで出会ったTim Hardin(ティム・ハーディン)の曲をはじめ、フォーキーなブルースがほとんどを占めるが、変わったところでは、Otis Redding(オーティス・レディング)の名曲“I Love You More Than Words Can Say”のカバーもある。オーティスのバージョンとはかなり解釈が違うが、ソウルの神に匹敵するほど素晴らしいカバーソングだ。
これほどの才能を持ちながら、音楽ビジネスには興味がなく、レコード会社の提案もほとんど聞き入れなかったらしい。私生活では、ドラッグとアルコールに溺れてしまい、正式なアルバムは生涯2枚しか残していない。
ソウルやジャズではなくフォーク・シーンから現れた白人女性ミュージシャン、カレン・ダルトン。ビリー・ホリデーのようなスターや社会のアイコンにはならなかったが、路傍の石が語りかけるようなディープなアメリカを体現した貴重なアーティストのひとりである。
Producer: Nick Venet
1969年