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ソウル&ファンク大辞典

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James Carr / YOU GOT MY MIND MESSED UP

ライブが苦手だった裏ミスター・サザンソウル

ジェイムス・カー You Got My Mind
Messed Up,
James Carr, 1966
一般的には「サザンソウル」というとOtis Redding(オーティス・レディング)やAl Green(アル・グリーン)のようなビッグネームの名前がまず第一に思い浮かぶだろうが、個人的にはJames Carr(ジェイムス・カー)のサウンドの方がしっくりくる。前者の大物二人は、もちろん素晴らしいのだが、彼らは超一流のエンターテナーであり、ジャンルの垣根を超え、時代を象徴する存在でもある。それに対してジェイムス・カーは、もっと不器用で、時代とは関係なく、彼個人の「ソウル」で勝負しているように感じるのだ。レコードを聞いていると、意識がメンフィスのどこかのライヴハウスにトリップして、もっとパーソナルな空間でジェイムス・カーが歌っているような感覚にとらわれる。

この“You Got My Mind Messed Up”には、シンプルな、これぞサザンソウルという曲が凝縮されている。このアルバムを含めたった2枚のLPしか残していないのに、バラードからアップテンポの曲まで、信じられないぐらい魂の入った歌を聞かせてくれる。なかでも“These Ain’t Raindrops”、“The Dark End of the Street”、そして“You’ve Got My Mind Messed Up”の3曲は、サザンソウル史上最高の名曲だ。

こんな素晴らしい作品を残しているのに、ライブではなかなか本領を発揮できなかったらしい。生まれたときから精神的な疾患を抱えており、長期間のツアーを安定してこなしたり、エンターテナーとして振る舞うことには向いていなかったようだ。それでも1979年には来日公演を果たし、伝説のライブを残している。そのライブでは薬を服用しすぎて、ステージ上で意識が飛んでしまい、凍り付いたように動かなくなってしまったというのだ。いい伝説ではないかもしれないが、ジェイムス・カーらしい逸話だ。

たとえライブが苦手でも、彼の作品の評価が下がるわけではない。「ソウル」とはエンターテイメントであると同時に魂のアートでもある。オーディエンスは演者の生き様を感じたいのだ。間違いなくこの“You Got My Mind Messed Up”というアルバムは、サザンソウルにおける最高傑作のうちの一枚だ。

Producer: Rudolph V. “Doc” Russell
1966年



You’ve Got My Mind Messed Up - James Carr
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