ヒップホップを経験した時代からみた、永遠に完成しないソウル&ファンクの大辞典。
You Got My Mindこの“You Got My Mind Messed Up”には、シンプルな、これぞサザンソウルという曲が凝縮されている。このアルバムを含めたった2枚のLPしか残していないのに、バラードからアップテンポの曲まで、信じられないぐらい魂の入った歌を聞かせてくれる。なかでも“These Ain’t Raindrops”、“The Dark End of the Street”、そして“You’ve Got My Mind Messed Up”の3曲は、サザンソウル史上屈指の名曲だ。
こんな素晴らしい作品を残しているのに、ライブではなかなか本領を発揮できなかったらしい。生まれたときから精神的な疾患を抱えており、長期間のツアーを安定してこなしたり、オーティス・レディングやアル・グリーンのようにエンターテナーとして振る舞うことには向いていなかったようだ。それでも1979年には来日公演を果たし、伝説のライブを残している。そのライブでは薬を服用しすぎて、ステージ上で意識が飛んでしまい、凍り付いたように動かなくなってしまったというのだ。いい伝説ではないかもしれないが、それこそが彼にとってのありのままのソウルの表現であり、ジェイムス・カーらしい逸話でもある。
たとえライブが苦手でも、彼の作品の評価が下がるわけではない。「ソウル」とはエンターテイメントであると同時に魂のアートでもある。オーディエンスは演者の生き様を感じたいのだ。間違いなくこの“You Got My Mind Messed Up”というアルバムは、サザンソウルにおける最高傑作のうちの一枚だ。
Producer: Rudolph V. “Doc” Russell
1966年