mossfad.jp
カルチャー ライフ ネコ目

カルチャー/名盤

Velvet Underground / VELVET UNDERGROUND & NICO

ロックの狂気が現代アートとして認められた記念碑的作品

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド Velvet Underground &,
Nico, 1967
もしあなたが反逆児を自称しているなら、決して避けては通れないのがヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビュー・アルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』。この大名作は、理解できようができまいが、ただ音の洪水に身を任せていればいつか応えてくれる。アナログ盤を購入し、神棚に飾り、迷いがあるときにはお伺いを立てたくなる時代を超えた一枚。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのサウンドの中心は、ルー・リードとジョン・ケイル。ルー・リードはバンド結成前から作曲家としての仕事をしており、音楽家としての実績があったが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドにおいては、ロックのスピリットを導入することと、まさしく「アンダーグラウンド」な世界を切り取った作詞家として貢献が大きい。対するジョン・ケイルは、クラシック音楽と現代音楽の素養があり、当時のロック界としては異質の存在だった。初期ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの特徴でもあるドローン・サウンドは、ジョン・ケイルがラ・モンテ・ヤングとの出会いから影響を受けたものだと推測される。もう一人、ドラマーの常識を無視するようなプレイをしたモーリン・タッカーの力も大きい。例えば『ヘロイン』。歌詞はあえて訳しはしないが、そのものズバリを表現し、歌詞の世界と同期するようにリズムの速さは揺れ動く。曲全体を包むヴィオラのドローン音が時間感覚を無限にする。終盤のノイジーなリードギターでエクスタシーに達する。これら全体が何を意味するのかは明らかだ。

しかし、彼らだけではヴェルヴェット・アンダーグラウンドも、アヴァンギャルド過ぎて陽の目を見ることはなかっただろう。彼らの才能を発掘したアンディ・ウォーホルがいたからこそ、『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』という大傑作は生まれた。初期のライヴはアンディ・ウォーホルの映像上映とセットになっている場合が多く、客層も芸術家としてのウォーホルを評価するスノッブなニューヨークの金持層だった。さらに地味なルックスのヴェルヴェット・アンダーグラウンドに派手なイメージを持ち込んだのもウォーホルだった。彼のゴリ押しで新たなメンバーになったが「ヴォーグ」誌等で活躍していたモデルのニコだった。こうしてあの伝説のバナナ・シールの『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』誕生のためのすべてのピースは揃った。ルー・リードやジョン・ケイルという音楽家が偉大すぎて見過ごされがちだが、このファースト・アルバムに関しては、音楽をヴェルヴェット・アンダーグラウンドが担当したアンディ・ウォーホルのアート作品のひとつであるというのが現実である。

一応プロデューサーとしてアンディ・ウォーホルがクレジットされているが、サウンド面の貢献度はほとんどないだろう。ルー・リードとジョン・ケイルによると、真のプロデューサーはスーパーバイザーとして記述されているトム・ウィルソンだと証言している。

セカンド以降のアルバムも素晴らしいが、どれもこの後ソロになるルー・リードの助走のような作品であり、「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」というユニットで考えた場合、ファースト・アルバム以外に選択肢はない。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのバンド名の由来は、ニューヨークの路上に捨てられていたSM小説の名前だという。彼らの音楽は本当に、雨に濡れた都会の裏路地のような世界観であり、アンディ・ウォーホルとの出会いが彼らに奇跡をもたらした。

Producer: Andy Warhol
1967年



GROOVE


Heroin - Velvet Underground
関連記事


mossfad.jp