米国のオンライン・ニュースサイト『オブザーバー』の編集長がまた辞任した。トランプ大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナーが経営権を掌握して以来、なんと8人もの編集トップが同社を去っている。
1987年、紙の新聞として誕生した“Observer”(当時の名称は“New York Observer”)。2006年には25歳の不動産会社社長の息子、ジャレッド・クシュナーが買収。紙名を現在の“Observer”とし、経営コスト削減のために紙面サイズをタブロイドに縮小した。しかし、それでも新聞事業の経営不振は払拭されず、2016年には紙の発行を中止、オンライン専門のニュースサイトとして再出発を図った。
2016年といえば、クシュナーの義父にあたるドナルド・トランプが米大統領選に立候補した年。クシュナーも側近として選挙戦に力を尽くした。オブザーバーは、米国メディアとしては珍しくトランプ陣営支援を公言している。(トランプの大統領選勝利後、クシュナーは大統領上級顧問に就任し、オバザーバーへの影響力を維持するために経営を義理の兄弟であるジョセフ・メイヤーに譲っている)
トランプ/クシュナー一族の圧力が強くなり過ぎれば、編集部内で不満が募るのは当然だ。クシュナーは友人のケン・カーソンを編集長の座に据えたこともあるが、カーソンも2017年に同社を去っている。
かつてはニューヨーク・オブザーバー誌に掲載されたキャンディス・ブシュネルのコラムが反響を呼び、ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』の原作になったこともあったが、今では際立った特徴が何もないサイトになってしまった。同サイトはしばらくの間、編集長を置かずに事業を続行する。