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1966年のこの作品で二人が取り憑かれていたのは、洗練されたボサノバではなかった。アフリカとブラジルの大地の匂いがする宗教「カンドンブレ」や「ウンバンダ」、格闘技とダンスの要素が混じった「カポエイラ」だった。特にカンドンブレ発祥の地、バイーア州に足を運び現地の音を体感し、自らの音楽に取り込んだ。こうして20歳以上離れた二人は、サンバの中にブラジル土着の音とその源流ともいえるアフリカをミックスし、新たなスタイルを世に提示した。
『アフロ=サンバ』の頭脳となっているのは間違いなく知性と芸術的センスに溢れるヴィニシウス・ヂ・モライスだろう。彼はエリート外交官でありながらブラジルを代表する詩人兼ヴォーカリストでもあった。この作品のヴォーカルもほぼモライスが担当している。
アントニオ・カルロス・ジョビンの才能の見抜いたヴィニシウス・ヂ・モライスが、次に白羽の矢を立てたのがバーデン・パウエルであり、見事に音楽の神を呼び寄せることに成功している。高い技術を誇るパウエルもここではただ神を音楽に下ろすことだけに集中している。この作品を経てパウエルもジョビンと同じようにブラジル音楽の神へと昇り詰める。
神との交信に巫女の存在は欠かせない。Quarteto em Cy(クアルテート・エン・シー)も素晴らしいヴォーカル・パフォーマンスを残している。
Producer: Roberto Quartin, Wadi Gebara
1966年