ソウル・クラシックスの大辞典を構築中! スマホ対応なので出先でもどうぞ。
80年代のブラック・ミュージックは、非常に洗練され、ポップスとの境界線が曖昧になっていた。また音楽のデジタル化も進んでいたが、まだ消化の仕方が十分ではなかった。しかしランDMCの登場により全ては変わった。ロックでも何でもオイシイものは全て吸収し、楽器を捨て、レコードやリズム・ボックスを使って無理なくグルーヴを作り出し、ラップによりメッセージを強調することにより、逆にブラック・ミュージックのアイデンティティを取り戻すことに成功したのだ。“Walk This Way”のようなポップな曲だけではなく、メジャー志向の作品には似つかわしくない“Proud To Be Black”のような政治的な曲もこのアルバムには収録されている。
『レイジング・ヘル』には音楽界を焼き尽くすほどの商業的・社会的なパワーがあった。そして一度焼き尽くされたからこそ、それが肥料となり、ブラック・ミュージックは新たな芽を出すことができた。ランDMCの成功がなければ、そしてヒップホップの成功がなければ、ソウルやファンクの魂は、完全に消滅していたかもしれない。
Producer: Russell Simmons, Rick Rubin
1986年