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ヒップホップといえばサンプリングがつきものだが、カーティス・ブロウの場合は、ターンテーブルはなし。全てバンドによる演奏でバックトラックを制作した。彼の売りはちょっとイナタイ生のグルーヴと「おしゃべり」パフォーマンスだった。この時代のラッパーのほとんどは、社会的・暴力的なメッセージを発することはなく、みんなでハッピーになることに主眼を置いたパーティ・ミュージックのMCに徹していた。ある意味、衰退したディスコの正統継承者、もしくは受け皿がカーティス・ブロウやシュガーヒル・ギャングのようなアーティストだったのだ。強面のアフリカ・バンバータでさえ、パーティ・ミュージックという点においては、大きな違いはない。本作『カーティス・ブロウ』収録のB3 “All I Want in This World (Is to Find That Girl”は、きっとディスコで遊び慣れた客向けのチークタイム用のスローとして用意したのだろう。
ディスコの規則正しい四つ打ちは、ブラック・ミュージック最大の特徴の即興性を完全に奪った。そして、そのディスコをネタにして飲み込んでいったヒップホップの時代が来るのは必然であった。それにしても、カーティス・ブロウという人は、おしゃべりで陽気なのに、ダンスフロア独特の哀愁も漂う不思議なアーティストだ。
Producer: J. B. Moore, Robert Ford, Jr.
1980年