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メロウな曲調に呼応するように、ブラッド・オレンジが伝えようとするメッセージはとても内省的。ここにはスーパースターのデヴ・ハインズは存在しない。どの街にもいるであろう一個人としての黒人が抱える闇や、性的マイノリティとしての不安を繊細に描き出している。そしてそこから脱出するために必要なのが「ブラック・スワン」の羽なのだろう。
ブラッド・オレンジは、有り余る音楽的才能だけではなく、文学の力も使って傷ついた人たちの声を代弁する。ケンドリック・ラマーは、現代社会を直視し、アフリカ系米国人の声を言葉にしてピューリツァー賞を受賞した。ブラッド・オレンジは社会全体ではなく、個人の内面にフォーカスして時代の空気を写し取った。『ニグロ・スワン』も、何かの文学賞を受ける価値は十分ある気がする。
Producer: Devonté Hynes
2018年