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ソウル&ファンク大辞典

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Blood Orange / NEGRO SWAN

私小説のようなブラックミュージック

ブラッド・オレンジ Negro Swan,
Blood Orange, 2018
Dev Hynes(デヴ・ハインズ)として、ソランジュやカーリー・レイ・ジェプセンをはじめ多くのアーティストを手がけた一流プロデューサーとは思えないほどシンプルな構成で展開するブラッド・オレンジの『ニグロ・スワン』。まるでデモテープか書きかけの絵のようでもある。ポップ・ミュージックの最前線にいるにもかかわらず、音をこれでもかと重ねる方法ではなく、墨絵や俳句のように、隙間を作り、聞き手の想像力を掻き立ててくれる。ゲスト・ヴォーカルとしてパフ・ダディーやエイサップ・ロッキー等が参加しているが、楽器のほとんどはデヴ・ハインズが自ら担当している。

メロウな曲調に呼応するように、ブラッド・オレンジが伝えようとするメッセージはとても内省的。ここにはスーパースターのデヴ・ハインズは存在しない。どの街にもいるであろう一個人としての黒人が抱える闇や、性的マイノリティとしての不安を繊細に描き出している。そしてそこから脱出するために必要なのが「ブラック・スワン」の羽なのだろう。

ブラッド・オレンジは、有り余る音楽的才能だけではなく、文学の力も使って傷ついた人たちの声を代弁する。ケンドリック・ラマーは、現代社会を直視し、アフリカ系米国人の声を言葉にしてピューリツァー賞を受賞した。ブラッド・オレンジは社会全体ではなく、個人の内面にフォーカスして時代の空気を写し取った。『ニグロ・スワン』も、何かの文学賞を受ける価値は十分ある気がする。

Producer: Devonté Hynes
2018年



Saint - Blood Orange
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