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ROMA/ローマ

この映画は、冷静な視点でとにかく淡々と進んでゆく。まるで脚本のないドキュメンタリーのようでもある。時代も最初はよくわからない。歴史的に大きな事件がモチーフに使われているが、太平洋の反対側に住む外国人にとっては、それさえも気がつかない。ただどのシーンもワンショットごと綿密に構図を練られた芸術写真のように美しい。

前作『ゼロ・グラビティ』とは全く違い、アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』には、人間臭い人たちがたくさん出てくる。登場する人物は、静的なカメラワークとは対照的に、同じ人格とは思えないほど、感情の振れ幅が激しい。時にはエゴ丸出しで、時には親身になって悩みを聞く。好きな女ができれば、いとも簡単に家庭を捨て去る男がいれば、嫌なことがあると、関係のない家政婦に八つ当たりする女もいる。同じ屋根の下に暮らし実の孫のように可愛がるが、娘のことを何も知らない老婆もいる。ところが、どこにも心底憎むべき悪人は存在しない。様々な人が様々なポジションで人間らしい生活を送っているのだ。現代の視点からすると、ここには隠しようのない差別が存在するが、それでも人生を謳歌しようと前向きである。

アルフォンソ・キュアロンの子供時代の体験をベースに、この脚本は書かれたという。きっと映画に描かれたメキシコは、今ではほとんど感じることができないのだろう。記憶の中だけに存在する心象風景なのかもしれない。

監督にとっての私小説のような作品。アルフォンソ・キュアロンのファンなら見る以外の選択肢はない。

P.S. 初めてアップリンク吉祥寺に行きましたが、とてもいい映画館でした。

監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ他
2018年


公式サイト

TRAILER



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