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マックイーン:モードの反逆児

アレキサンダー・マックイーン

ハイファッションに関心のある人ならアレキサンダー・マックイーンが悲劇的な死を遂げたことは知っているだろう。この映画は、死に向かって進行するのだが、彼が闇の世界に足を踏み入れたのは、人生の最期だけではなかった。ファッション・デザイナーとしてデビューしたその時から、彼の最も大きなモチーフの一つは、ファッション界ではあまり用いられることのない人間の「死」だった。


父はタクシーの運転手、ロンドンの下町イーストエンド生まれのコックニー訛り、庶民的な環境で育ったリー・アレキサンダー・マックイーン。彼はきっと多くの友人がギターを持ってバンドを結成するように、自然にハサミを持ち服作りを始めたのだろう。だからこそ、ロックミュージシャンのように、頭の中は始めから「ダークサイド」に支配されていたのではないか。彼はクリエイティブな人生の最初の段階で、ブルースでいう「クロスロード」に立ち、ファッション界の悪魔に魂を売ってしまったのだ。27歳でジバンシィのデザイナーに抜擢されることになるが、27歳といえばブライアン・ジョーンズやジミ・ヘンドリックス、カート・コバーン等、何人ものロックスターが死んだ「27クラブ」にあたる。ジバンシィを受け入れた時点でアレキサンダー・マックイーンもデザイナーとしての死を迎えていたのではないか。そして「死」を受け入れたアレキサンダー・マックイーンに、悪魔はとてつもない成功をもたらした。


アレキサンダー・マックイーンには二人の女神もついていた。実の母親と、ファッション界での母親的存在、元「ヴォーク」編集者でスタイリストでもあるイザベラ・ブロウだ。この二人の母親は、彼に安定と刺激を与えた。


しかし、女神が去った後にそこにいたのは悪魔だけだった。アレキサンダー・マックイーンと同じように死に取り憑かれた芸術家ジョエル=ピーター・ウィトキンの写真をショーのモチーフにするようになり、自らの存在自体もそのイメージと重ねて考えるようになっていった。


それにしても、ファッション界は長年にわたって素晴らしい才能を潰し続けており、改善しようという意志さえ感じられない。毎年同じ季節にお決まりのショーを開催するのは、いい加減やめてもいいのではないだろうか。同時期に同じ都市で大量のショーを開催したがっているのは、お祭り好きのビジネスサイドの人間だけではないか。デジタル技術が発達した現代なら、もっと他の発表方法もあるだろう。アレキサンダー・マックイーンのように、ショー自体がアートとして成立するデザイナーなら、ファッション・メディアだけではなく、もっと幅広い層をターゲットにすることもできるだろう。


『マックイーン:モードの反逆児』は、リー・アレキサンダー・マックイーンという素晴らしい才能に触れることができる感動的な映画だが、ファッション界の理不尽さも同時に感じ、複雑な気持ちになった。


監督:イアン・ボノート、ピーター・エテッドギー
出演:リー・アレキサンダー・マックイーン、イザベラ・ブロウ、トム・フォード他
音楽:マイケル・ナイマン
2018年


公式サイト

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