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「役に立たない機械をつくった男」ブルーノ・ムナーリ

ブルーノ・ムナーリ

「役に立たない」というタイトルに惹かれて、世田谷美術館でブルーノ・ムナーリ展を観覧。イタリア未来派の黎明期に子供時代を過ごし、彼自身も「後期未来派」の一人として知られている。未来派とは、伝統的な表現を徹底的に忌み嫌い、当時のテクノロジーを全面的に受け入れながら、全く新しい表現方法を追求する運動。後期未来派の多くがそうであったように、ブルーノ・ムナーリもいわゆる芸術家としてだけでなく、絵本・広告・映像・プロダクトデザイン等、様々な分野に手を伸ばした。

展覧会のフライヤーにあった彼の言葉、「文化とは驚き、つまりこれまで知らなかった事柄から成り立っている」は、まさしく彼の広範囲な作品全てを言い表している。アートに生きる世界の人が、意図的に見るものをある方向に導いても、それはすでにある世界を疑似体験させるだけ。だからブルーノ・ムナーリは「役に立たない」もしくは「意味を持たない」ものを作り続けた。驚きに価値を見出した彼は、これまで知らなかった事を体験させることだけに集中していたのだろう。文化を生み出すのは芸術家ではなく、それを見た市井の人々だからだ。(意図を持ったことが原因で、後に未来派は戦争に加担することになった。)

発表した当時は、ほとんど評価されなかった「役に立たない機械」も、現在では類似品が街に溢れ、資本主義社会の十分役に立っている。無意味な連鎖が続く絵本は、谷川俊太郎訳の翻訳本が出るほど世界中に広まった。商品を排除して“CAMPARI”の文字が様々な書体で無造作に配置された広告は、カンパリ社の企業価値を大きく高めた。

「役に立たない」ものがない世界なんて、息苦しすぎる。意図を他者に強要するようになるとイタリア未来派の二の舞を演じてしまう。役に立たないものほど必要なものは、この世にはないのだ。


帰りがけにミュージアム・ショップで買った金太郎飴。これ誰だかわかります?

アンリ・ルソー

答え:19世紀後期の画家アンリ・ルソーでした。



GROOVE


G.T. - 坂本龍一『未来派野郎』より

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