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1曲目の“O Caroline”は、これぞロバート・ワイアットというような繊細なバラード。作曲はDavid Sinclair(デイヴィッド・シンクレア)で、ワイアットは詩を担当。別れた女性のことを歌っているらしいが、この詩が普通ありえないような私小説的内容で、自分のカッコ悪さをそのまま吐露するという壮絶な内容。それが美しいメロディに乗って淡々と語られていく。そのままいつの間にかインストの“Instant Pussy”へと続いていくが、この曲もタイトルからして何か悪意がありそうだ。同じ調子でA3 “Signed Curtain”にもつながるが、この歌詞も完全になめきった内容で、ただ曲の展開を説明するだけ。最後に“O Caroline”につながるような情けない一節で曲は終わる。
A4の “Part of the Dance”からは、ロバート・ワイアットのもう一つの側面、カンタベリー系のサイケデリック・ジャズロックとアバンギャルド・ジャズがミックスしたような曲が続く。マッチング・モウルをバンドとして捉えるなら、この辺りが聴きどころとなる。
この作品は大きく分けてこの二つの部分から構成されているが、ラストの“Immediate Curtain”では、両者が衝突し、混沌とした中で終焉を迎える。
リスナーを恐ろしいまでのプライベートな世界に引きずり込みながら、冷静かつ皮肉な視点で一枚の作品にまで仕上げる。こんなことができるのはロバート・ワイアットぐらいしかいないだろう。
Producer: Matching Mole
1972年