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本作“Fly or Die II: Bird Dogs of Paradise”でもパンクミュージシャンのように、既成概念を嫌い、音に全てをさらけ出すスタイルは貫かれている。彼女のジャズはまるでかつて路上でプレイするのが当たり前だった頃のブルースミュージシャンのようでもある。ジャズ界から高い評価を得ていたが、彼女自身はそれを気にすることもなく、ダブやラテン、エレクトロニクス系等あらゆるフィールドに出て、さまざまなミュージシャンとの交流を重ねていた(神経質そうなイメージのジェイミー・ブランチだが、実際は非常に社交的でさまざまな人々と交流することが好きだったらしい)。
ブルースの神(もしくは悪魔)に捧げたような呪術的な“Birds of Paradise”に始まり、次の“Prayer for Amerikkka Pt.1 & 2”ではチャールズ・ミンガスを想起させるような地を這うようなヴォーカルを聞かせてくれる。インストから離れた理由として彼女は「同じところにとどまり続けることは、決して美しいとは言い難いこと」だとし、「そのためには声を使うのも悪くない」と述べている。彼女は「ジャズプレイヤー」ではなく、一音楽家なのだ。音楽の神に近づく最善の方法があれば、手段は問わない。作品の中では、人種や移民問題等に言及し、言葉の力を音楽に加えている。
彼女の死が報じられた日の夜、ジェイミー・ブランチの自宅すぐ近くのブルックリンの公園には友人数十名が自然と集まったという。ハドソンリバーの沖には自由の女神がそびえたっていた。彼らはまるで女神に聴かせるかのごとく、スマホで故人の音源をメガフォンを通して爆音で鳴らし、みんなで聴きながら死を悼んだという。すると街のどこからか、そのビートに合わせて演奏するラテンバンドの音が聞こえたという。スタイルを問わず、垣根を越えて街の人と触れ合い続けた彼女にとって最高の追悼歌になったことだろう。
Producer: jaimie branch, Scott McNiece
2019年