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オーソドックスな演奏をバックに歌うチェット・ベイカーの声は非常に甘く、当時は女性に大人気だったらしい。しかし彼が吹くトランペットにも共通点が多いが、ヴォーカルの方がより不安定で、彼のその後の人生がそのまま予言されているのではと、勝手な想像をしてしまう。
このアルバムの発表後、彼の体は徐々にヘロインに蝕まれていく。大切なトランペットも麻薬を買うために質に入れてしまうほどだった。1988年にホテルで転落死する頃には、かつての美青年の面影を全く失っていた。
見た目は変貌してもチェット・ベイカーが追い求めた音は、常に過度なまでにシンプルで甘美な世界だった。その第1期の完成形がこの『チェット・ベイカー・シングス』。先入観だとしても、このアルバムには彼の人生のすべての要素が含まれているように感じる。
Producer: Richard Bock
1956年