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18人兄弟の9番目として生まれたテリー・ハフは、10代の頃から音楽に溢れた生活をしていたようだ。まず3歳年上の兄AndyがリーダーのAndy and the Marglows(アンディ&ザ・マーグロウズ)のメンバーとして活動。このグループは地元で人気があったものの、自我の強いテリーは、兄弟達と仲違いし、すぐに解散している。その後、何故か警察官になり、異例の若さで出世したという。
しかし、才能はあるものの、尊大な態度のハフは、上司と衝突してしまう。そして、26歳の時に警察を辞め、再び音楽の世界に戻ることを決意する。こうして結成されたのがテリー・ハフ&スペシャル・デリバリーであり、彼らが唯一残したアルバムがこの“The Lonely One”だ。彼らには素晴らしい未来が待ち受けているはずだったが、レコーディングの最中から、やはりけんかが絶えず、結局作品が完成した頃には、バンドは解散してしまった。
彼の歌には実体験が元になっているものが多い。“I Destroyed Your Love”は、幼なじみで若い時に結婚した妻ワンダとの関係が歌われている。美しいワンダの容姿は周囲の男達の気を引き、結婚後もよく声をかけられていたらしい。嫉妬に狂ったテリー・ハフは、妻に強くあたってしまい、愛しているにもかかわらず、結婚生活を破壊してしまった。もうひとつの名曲『ザ・ロンリー・ワン』では、ワンダとの破局後に出逢ったデボラとの関係が歌われている。
レコードは発売されたものの、仲違いしたバンドのプロモーションが積極的にされるわけもなく、売れ行きも芳しくなかった。その後、音楽業界でテリー・ハフに手を差し伸べるものはほとんどいなかった。
それからというものは、音楽の仕事はほとんどなくなり、保険の営業などあらゆる仕事を転々とし、彼の唯一の財産ともいえる印税の権利も失い、最終的にはホームレスになってしまった。
彼は死の直前に、一度地元の新聞に取り上げられ再注目されている。しかし、神様は残酷なことに彼に残された本当に最後の宝まで奪っていた。そのとき彼は声帯ポリープを患っており、二度と歌うことができなくなっていたのだ。
Producer: Al Johnson
1976年