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共産圏で育った反動か、彼女の表現にはタブーがなく、時には男性器(もちろんフェイク)を腰にぶら下げて登場したこともある。下ネタ上等の下品なルックスと、オペラ的なヴォーカルスタイルがアンバランスにミックスしており、こんな女性は音楽史上ニナ・ハーゲン以外いないかもしれない。
その彼女がソロアーティストとなり完全な自由を手に入れ、英語圏向けに初めて製作したのが本作『ナン・セックス・モンク・ロック』。この頃からダンス・ミュージックやレゲエの要素を頻繁に取り入れるようにもなり、おどろおどろしい彼女の世界観は、より複雑化していく。
この作品は、ローリング・ストーン誌から「史上最も聞くに耐えないアルバム」という、ニナ・ハーゲンにとっては非常に輝かしい称号をもらっている。
また、ドイツのアンゲラ・メルケルが首相を退任する際の式典で選んだ曲が、同じ東ドイツ生まれのニナ・ハーゲンが統一前にリリースした曲『カラーフィルムを忘れたのね』だった。東ドイツの体制をモノクロフィルムに例え政治批判した当時の共産国家としては許されないような内容だった。ふたりは共産圏時代にテレビ討論会で対立し、ニナ・ハーゲンが怒りをぶちまけ収録中にスタジオを去るという事件もあった。それにも関わらずメルケルは、この曲を選択したのだ。主張する意見は両極にあったが、結局二人が目指す方向は同じであったのだ。
Producer: Mike Thorne
1982年